漫画家vs編集者。
漫画家と編集者の闘いについて、ちょっとおもしろい話が聞けましたので、やや時期が過ぎていますが、ご紹介します。
TBSラジオでやってるバトルトークラジオ「アクセス」の、昨年12/29放送分(のコーナー)です。評論家・宮崎哲弥さん、社会学者・宮台真司さん、それに、司会の渡辺真理さんによる対談が、音声で配信されています。
前段部分では音楽(J-POP)関連の話をしています(というか、それが本題)。
で、漫画に関係するのは、(コミュニケーション/ぶつかり合いが必要な)「バンド」が衰退し、(独りよがりでも大丈夫な)「打ち込み」が多くなってきたよね、みたいな話に続いての部分。やや長めに文字に起こして引用してみます(8分すぎ)。
なんかサスケの脳には難しー部分もあるので、誤字/誤変換があったらすみません。また、カギカッコの付け方も、発言の意図とは異なる部分があるかもしれません。ご了承ください。
宮台「漫画ってのはもともと、東京六大学――東大・早稲田・慶応を出たようなエリート編集者と、ちょっと頭の狂った漫画家がですね、コラボレーションするわけですよ。
ちょっと頭が狂った漫画家を、編集者がですね――本読みの編集者が、たくさん本を読んできたその経験を元にして、こう枠にはめるわけですね。
しかし、枠にはまろうとしないようなエネルギーとぶつかり合うことによって、コラボレーションが成り立つわけだけども――」渡辺「そこで、『作品』が『商品』になるということですね」
宮台「はい。ところが、最近の編集者の悩みはね、『ちょっと狂った』書き手を見つけ出すのが難しい、と。狂ってる場合には、『ほとんど狂ってる』っていうですね……、えー、あの、NGワードを今言いそうになって、トートロジーになってしまいましたけども……(笑)、『ホントに頭のおかしい人』になってしまう。そうなると、コラボはできないわけですよね」
宮崎「それはなに? 狂気の狂度が強くなったってこと?」
――(中略)――宮崎「でも、別の可能性もあるよね。つまり、編集者の方がコミュニケーション能力がなくなっている……」
宮台「あ、それはあり得ます」
宮崎「でしょ?」
宮台「つまり、僕ら――いちおう社会科学を専門にしている立場から言うと、全体的に社会がいわゆるエクスクルージヴ(exclusive)、つまり、閉鎖的/排除的になっている。そうすると、コミュニケーションは各場所で『島宇宙化』しやすいし、各個人の内面も閉ざされやすく、コミュニケーションが行われてるように見えても、基本的には、ある種通り一遍の、場をやり過ごすだけのものになりがちだ、ということはありますね」
宮崎「だって、昔の名漫画編集者って何人もお会いしたけど、その人たち自体が、ちょっと狂ってるような人が多いじゃないですか。やっぱそういう人が……。今のエリート、東大とか京大とかをお出になって一流出版社に入られた方っていうのは、漫画雑誌の担当になっても、あんまり変わんないんだよね」
宮台「まぁ、そうですね」
宮崎「あんな風に狂っていかない。『仕事の中で狂っていく』ってあるわけですよ。そういうことって、ないでしょう」
宮台「あり得ますね。ホントにおっしゃる通りで、その話を掘り下げると、今日は教育問題の話になってしまうのですけど」
というところで、また音楽の話に戻っていきます。ここでの、音楽の「着うた化」(コミュニケーション・ツール化)も、なかなか興味深いですけど。
まぁ、全体的に、先鋭化させることで主張を明確にする、みたいな要素も多分にありますし(別の部分で「自分の嗜好は、ちょっと脇に置く」とも言われてる)、必ずしも賛成できる部分ばっかりでもないですけど。年長者の繰り言みたいな側面が、ちょっと強すぎる気もしますし(他の部分も)。
ただ、興味深いなーとは思いました。傾聴に値するというか。そのまま受け取る必要は全然ないと思うけど、どっかで心に留めといてもいいかもしれません。
てゆか、どっかで聞いたような話でしょ?(笑)
これは、ラジオ番組ですが、ポッドキャストとして配信されています。データ的には通常のMP3ファイルなので、たいていのパソコン環境で聞くことができるでしょう(ただし、10MBくらいありますので、ブロードバンド推奨)。
また、この12/29分の「バトルトーク」は、年末スペシャルとして行われたもので、続編も順次公開されていってます。
できれば、実際に皆さんの耳で確認してください。是非ぜひ。